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お知らせ

2005年度統計関連学会連合大会企画委員会報告 (2005年10月)

企画委員会委員長 宮川雅巳

 関係各位のご尽力により,延べ729名の参加者を得て盛況のうちに終了できました.特に,学生の参加者が152名と若い研究者の参加が目立ったことは誠に喜ばしいことでした.ホテルでの開催という実に快適な環境がリーズナブルな参加費で実現できたのは,ひとえに広島大学を中心とする実行委員会のお陰です.改めて御礼申し上げます.

 以下は,今年度の企画の振り返りと今後の連合大会の検討課題です.これらについて会員各位からご意見を賜れば幸いです.

  1. 連合大会の開催形式
     連合大会は今回で4回目になります.これまでは,単なる合同大会でなく連合大会であるという考え方から,なるべく各学会の独自色を出さない方針で企画・運営してきました.一方で,学会色を出した企画をしたいという意見も出ていました.今回は1月に出した第1回目の案内文に明記したように,学会色を出した企画や特別講演を認める方針で行いました.各学会はそれぞれに異なる存在意義を持ち,連合大会が各学会にとって年一度の年会であることより,学会の特徴を大会で陽にアピールすることは当然と考えたからです.参加学会がたがいに切磋琢磨し,全体としてより高いものへ向かっていくべきです.これは決して連合の動きに逆行するものではないはずです.
  2. 企画セッションのあり方
     企画セッションの公募は一昨年より始まりました.昨年度の反省において,マンネリ気味や仲間内だけの企画セッションの存在が指摘されました.私は個人的に,研究発表会の「主」はオリジナルな研究成果を報告する一般講演にあり,企画セッションなどは「従」であるという考えを持っています.そこで,第1回目の案内文において,企画セッションに求められる要件をやや厳しめに述べました.結果として,企画セッションは昨年度の16件から9件に減りましたが,今回はいずれも魅力的な内容で,立ち見の出るほどの盛況なセッションが多かったことを喜んでいます.
  3. コンペティションの運営
     運営方式をかなり変えました.昨年まではコンペ講演だけを集めたセッションを設けておりましたが,今回は一般講演の中にその内容に応じて組み込みました.これについては担当委員が詳しく報告してくれています.
  4. 連合Webの立ち上げと大会用HPの充実
     今年2月に統計関連学会連合が正式に成立しました.連合の基本事業として連合Webの運用があり,連合大会のWebはこの一部として組み込まれる形になりました.今回は連合大会Web委員会の3名の委員の多大なご尽力によりたいへん素晴らしい大会用ホームページが出来ました.これにより次に述べる新しい試みも可能になりました.
  5. 原稿提出方法と報告集印刷上のトラブル
     従来,研究報告集原稿は紙提出でしたが,今回から電子ファイルによる提出が可能になりました.しかし,一部の頁で数式記号が消えてしまうというトラブルが生じました.事務局の迅速な措置によりWebに訂正版が掲載されましたが,原因を究明し再発防止に努めることが課題となりました.
  6. 大会・懇親会への事前参加申込み
     大会と懇親会への事前申込みも可能になりました.当日の事務局の負担はいくぶん低減したようです.事前申込みしていただく方が今後増えていくことを期待します.
  7. 報告集の事前閲覧
     事前申込みされた方には,報告集の事前閲覧が可能になりました.これまでは座長の方だけに担当講演分を配布していました.ただし,事前閲覧の是非については,今後も検討していく必要があると思います.
  8. 報告集のスリム化とCD−ROM化
     連合大会になってから必然的に発表件数が増加し,講演報告集の厚さが問題になっていました.今回から,すべての講演において1頁を標準とし,最大2頁としました.結果として296件の発表で,総頁数は438頁でしたから,154件が1頁であったことになります.また,ここ数年の課題であった報告集のCD−ROM化も実現しました.報告集とCD−ROMについては,事務局の大変なご尽力のお陰で完成しました.厚く御礼申し上げます.

チュートリアルセミナー「Rによる経済・経営データの分析」報告

オーガナイザー 西郷 浩

 標記セミナーは,基礎編(70分)・応用編(100分)の構成でC会場にておこなわれた.会場にちょうどよい人数の受講者を迎えることができ,無線LANを利用してPCで自主的に実習する姿も見られた.山本義郎講師は,基本コマンドに加え,上達のための情報入手の方法など,初心者に有用な講義をなさった.安川武彦講師は,分析例を中心に,Rの環境でのオンラインによる経済・経営データの入手方法まで,上級者にも有用な講義をなさった.時間の制約から準備した内容の一部を割愛せざるをえなかったのは残念ながら,テキストもふくめて,「セミナー終了後にも役に立つ内容を」という目的は達せられた.

チュートリアルセッション「医薬品の安全性監視と薬剤疫学研究」報告

オーガナイザー 上坂浩之

 「日米EU医薬品規制調和国際会議」で合意されたガイドライン「医薬品安全性監視の計画」を受けて,本チュートリアルセミナーでは製造販売承認後の医薬品の安全性に関わる薬剤疫学研究の方法や事例をわかりやすく解説していただいた.欧米における大規模な研究(Nurses’ Health Study及び Women’s Health Initiative Study)と日本におけるインフルエンザ脳炎・脳症に関する研究が事例として紹介された.前者では2つの研究結果の食い違いとその解釈に関する議論,後者では調査研究の難しさなど,大変興味深い内容であった.方法や結果に関する質問もなされ予定時間を超えて終了した.製薬会社の製造販売承認後の安全性担当の方々の参加も多く会場では急遽補助椅子を用意することとなり,また講演終了後講師と話し合う方々が多数おられ,本講演への関心の高いことが窺がわれた.

追記:上記ガイドラインは2005年9月16日に厚生労働省医薬食品局より発出された.

コンペティション講演報告

コンペティション担当企画委員 富澤 貞男

 昨年,一昨年に続き,3回目のコンペティション講演を企画しました.対象となる会員は,平成17年4月1日時点で満30歳未満のいわゆる若手研究者(大学院生,教員等問わない)です.連名講演の場合は,コンペティション対象者は実際に口頭発表した者としました.お陰様で,今年も22名と昨年,一昨年とほぼ同程度(昨年は21名,一昨年は24名)の参加申し込みがありました.

  昨年までとの大きな違いは次の点です.昨年まではコンペティションセッションを一般講演等とは別に設けたのですが,今年は,コンペティションセッションを特には設けず,一般講演セッションにおいて関連するセッションの中でコンペティション講演を行うことにしました.プログラムには,コンペティション講演であることを明記することにしました.企画委員会で十分検討し,今年はこのような形式にいたしました.

 一般講演の一つのセッションの中に最大2件のコンペティション講演を組み,2日間で17セッションに渡り,22件のコンペティション講演が行われました.

 審査方法については,該当するセッションの参加者の自主記名投票と座長コメントに基づき,企画委員会で選考することにしました.自主記名投票での評価は,A:受賞に値する,B:受賞としてもよい,C:受賞に値しない,の3段階評価を用いました.ただし,講演者ならびに共著者は自身への投票は出来ないことにしました.

 評価は,研究内容のみならず,発表者各自が工夫をして,うまく内容を伝えられたか,質問に的確に答えられたかという発表の仕方も含め,全体としての素晴らしいプレゼンテーションになっているかを評価の対象としました.

 有効投票数は,最も多い講演者で54票,最も少ない講演者で14票でした.審査は,Aを2ポイント,Bを1ポイント,Cを0ポイントとし,講演者毎に有効投票数で平均点を算出しました.選考は,これらの点数と座長コメントに基づき,企画委員会で決定いたしました.その結果,2005年度統計関連学会連合大会最優秀報告賞には,岡本直也さんが選考され,2005年度統計関連学会連合大会優秀報告賞には,田畑耕治さん,松下幸敏さんが選考されました(セッション順).受賞者の皆様には,閉会式(表彰式)にてそれぞれ賞状と副賞が贈呈されました.

 なお,受賞されました3名はいずれもAの数がBとCのあわせた数よりも多かった方です.Aの方がBとCのあわせた数よりも多かったのは,22名中この3名の方のみでした.一方,残念ながら受賞されなかった方の講演も,コメントの中でたいへん高い評価を受けたものもありました.一般に,我々がプレゼントを誰かに贈るときに,相手がもらって最も喜んでくれる物を考えて贈ると思います.同じように,多くの聴衆が講演を聴いて(プレゼントをもらって),これは実に素晴らしいプレゼンテーションであるとつくづく感嘆するような講演は,多くの方から高い評価が得られているような気がします.
 
  今回のような大変権威ある大きな学会でコンペティション講演することは,受賞する,しないにかかわらず,若手の皆さんにとって大変に有益であり,今後の研究活動への大きな励みになると思います.若手によるコンペティション講演は,毎年,大変多くの方が関心を持って注目しております.多くの方に自分(自分の研究と自分自身)を知ってもらう,又とない絶好のチャンスであります.

 権威あるジャーナルへ論文を掲載することは重要なことでありますが,それとともに,若手の皆さんにとって,多くの方から一躍注目される立派なコンペティション発表をすることも大変に重要なことであり,これらは一流の研究者への登竜門と言っても過言ではありません.今回コンペティション講演された方の中から,将来世界のトップクラスの統計研究者が誕生するものと確信しております.これからも若手の皆さんには,是非コンペティション講演を考えていただきたいと思います.

 最後に,コンペティション講演をされました若手研究者の皆様,座長の先生方,審査に参加されました皆様,そして,コンペティション講演に関する準備等いろいろとご尽力いただきました大会運営関係者の方々へ心よりお礼申し上げます.

受賞者の言葉

最優秀報告賞

岡本 直也 (東京理科大学大学院 理学研究科)

 この度のコンペティションで名誉ある最優秀報告賞を頂き,大変光栄に思います.コンペティション担当企画委員・大会関係者の方々,審査にご協力下さいました方々,貴重なコメント・質問をして下さいました方々に厚く御礼申し上げます.指導教員の瀬尾隆先生には日頃から懇切丁寧なご指導賜り,心から感謝申し上げます.

 本報告では,楕円母集団の下で,多重対比較で用いられる平均ベクトル間の同時信頼区間構成法のひとつである修正二次近似法に必要な統計量分布の漸近展開を標本数が異なる場合に拡張して導出し,数値実験によりその近似精度を評価しました.研究内容をそのままスライドにしますと,式の変形と数表だけの単調なものになってしまいがちであり,また,数式ばかりのスライドを短時間で理解して頂くことは大変難しく面白みもありません.このため,修正二次近似のアイデアと,これを用いたことによる研究成果をグラフで示すことにし,一目で理解し易いスライド作りを心掛けました.想定される質問に対する回答のために予備のスライドを数十枚作成し,また,滑舌が悪いので練習に練習を重ねました.発表では緊張で手が震えるのでレーザーポインタは使わずに,大き目の赤い矢印のマウスポインタを使用してスライドを指示するなど,最善を尽くしました.このような様々な努力を最優秀報告賞として評価して頂くことができ感無量です.

 私は学会での講演が苦手であり,当初はコンペティションに参加する意思はありませんでしたが,研究室の後輩が参加することを知り,瀬尾先生の勧めもあって参加する運びとなりました.人前で話すだけでも緊張するため,さらにプレッシャーをかけるようなことはしたくないと思っておりました.しかし,講演で緊張する人はコンペティションであろうがなかろうが緊張しますし,普段接することの出来ない諸先生方から評価して頂けるというのは何にも変え難いことです.入賞できれば良いことばかりですし,できなくても何も悪いことは起こりませんから,コンペティション参加を躊躇する理由はないと改心しました.来年度以降も若手研究者同士で切磋琢磨できるコンペティションを有効に活用したいと思います.

 今後も多くの方からお褒め頂けるような分かり易い発表を心掛け,驕れることなく一層身を引き締め,統計学の発展に微力ながら尽力していく所存ですので,ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます.

優秀報告賞

田畑 耕治 (東京理科大学大学院 理工学研究科)

 この度の統計関連学会連合大会コンペティションにおいて,大変栄誉ある賞をいただき誠に有難うございます.これはひとえに多くのご指導をいただいた先生方のおかげだと,心より感謝しております.また,当日会場にて審査に参加いただいた方々,そして大変貴重なコメント,質問を下さいました先生方にこの場をお借りしてお礼申し上げます.

 今回の発表では,名義カテゴリからなる正方分割表統計解析において,これまで提案されていなかった周辺の非対称性に関するモデルを2種類提案し,そのモデルの有用性を理論と応用の両面から示しました.名義カテゴリ分割表の解析において,周辺対称モデルが良く用いられます.そして,このモデルが成り立たない場合に用いられる周辺の非対称性を示すモデルが,既にいくつか提案されております.しかし,それらのモデルは,順序カテゴリ分割表に用いられるものであり,名義カテゴリ分割表には適用できません.今回提案したモデルは,名義カテゴリ分割表に用いられる周辺の非対称性を示すモデルであり,理論的にシンプルでかつ応用面においても大変優れた性質を持つモデルとなっております.

 今回のコンペティション講演を通じて得られた経験は,私の研究活動において大変貴重であり,優秀報告賞受賞という結果は,今後さらなる研究への励みとなることと確信しております.講演申し込みを行ってから発表当日まで,コンペティション講演として相応しい発表とするために,発表内容の構成,スライドの作成,表現方法の工夫など,自分なりに最大限の努力をしてきました.さらに,素晴らしい会場と大変多くの聴衆の前で行った発表,審査に参加いただいた方々の貴重なコメントと評価は,何事にも変えがたい財産になることと思います.

 最後になりますが,コンペティション講演を企画,運営していただいた関係者の方々に心より感謝申し上げます.さらに,若手研究者にとって多くの方々に関心をもっていただけるチャンスであり,研究活動への大きな励みの場となるコンペティション講演がさらに発展することを心より願っております.

優秀報告賞

松下 幸敏 (東京大学大学院 経済学研究科)

 このたびは,統計関連学会連合大会優秀報告賞をいただき,大変光栄に思っております.日頃からご指導頂いております國友直人先生をはじめ,お世話になっているすべての方々に,この場を借りて心から感謝申し上げます.

 今回の発表では,近年の(特にミクロ)計量経済学の分野で注目を集めている ”Many, Weak Instruments” の問題を考え,特に「操作変数の数が大きい場合のt検定」について,その有限標本での挙動とその改良について議論しました.操作変数の数が大きい場合,古典的な大標本理論による近似は大きな歪みを生じうるということが知られてきました.そこで,操作変数の数がデータ数とともに大きくなる漸近理論(“large K-asymptotics”)を考え,これをt検定に適用したのが本研究の主な内容です.具体的には,LIML推定量の漸近分散を”large K-asymptotics”のもとで導出し,それによって基準化した新たなt統計量(large K-t統計量)の帰無仮説の下での分布の漸近展開を導出しました.さらに,漸近展開から得られるバイアス補正large K t-統計量を提案し,数値実験(シミュレーション)によって有限標本におけるサイズを比較しました.まず,通常のt統計量を操作変数が多い状況に適用した場合のサイズの歪みは非常に大きくなることが分かりました.これに対し,large K t-統計量による検定はこれを改良しますが,片側検定を考えると依然として大きな歪みが生じます.しかし,バイアス補正した統計量を使えば,実用上ほとんどの場合において良いパフォーマンスが得られることが分かりました.

 二回目のコンペティション挑戦でしたが,非常に緊張した中で,その緊張感と同時に本当に良いモチベーションを与えられたと思っております.このような貴重なコンペティションという機会を企画・運営してくださった先生方をはじめ,座長の先生方,審査してくださった方々に改めて心から感謝します.

 今後もこの受賞を励みとして,一層の努力を重ね,少しでも統計学・計量経済学の発展に貢献できればと考えておりますので,これからもどうぞよろしくお願いいたします.ありがとうございました.

過去のお知らせ

2005年度統計関連学会連合大会の企画 (2005年7月)

コンペティション講演のご案内 (2005年4月)

2005年度統計関連学会連合大会の企画進行状況 (2005年3月)

2005年度統計関連学会連合大会の企画進行状況 (2005年1月)

2005年度統計関連学会連合大会へのお誘い(広島の町とプリンスホテル) (2005年1月)

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