林 賢一(大阪大学大学院基礎工学研究科)
統計関連学会連合大会において,栄えある最優秀報告賞を賜り,大変嬉しく思っております.この結果は,指導教官である狩野裕先生の日々のご指導や,統計数理研究所の江口真透先生の貴重なご助言,研究室メンバーの有形無形のサポートの賜物であり,感謝の念に堪えません.また,コンペティションを企画・運営された皆様と審査された皆様に厚く御礼申し上げます.
今回の報告では,非対称ミスラベルデータという,生命科学や社会科学において起こり得る状況に対処するためのブースティングを提案いたしました.このブースティングに用いるロス函数は,先行研究で言及されている二つの望ましい性質を併せもち,数値実験においてもその有用性が確認されました.報告後,沢山の方々からご指摘・コメントを頂き,今後の研究の様々な方向性を模索する助けとなりました.また,理論面でも応用面でも高い関心をもたれていると実感し,一層の励みにもなりました.
学会やシンポジウムにおける発表では,発話の聴覚情報とスライドの視覚情報があるため,それらが混線しないように切り分け,集中して頂く箇所を常に一点に絞ることに腐心しました(本当の理想は映画や演劇のように,視聴覚情報が渾然一体となったものなのですが).実は,国内の学会において講演者として参加するのが一年半ぶりだということもあり,勝手を思い出すのに時間がかかり,大変緊張している中で発表いたしました.そのような状況でも有難い評価を頂けたのは,研究の最先端を切り拓いておられる先生方や,志を同じくする学生の皆様との日々の刺激的なゼミ・ディスカッションで培われた「人に伝えるための話し方」が基礎体力として身に染みついているからだと思い,私を取り巻く方々へ感謝せずにはいられません.
当然ではありますが,研究は未だ発展途上で,解決せねばならない問題も山積みです. 積まれた山の底に,掘り当てねばならない金鉱があることも自覚しています.少しでも統計科学の発展に貢献できるよう,またコンペティションセッションで頂いた評価が「ミスラベルであった」とご期待に背くことのないよう,一層の研鑽を重ね,研究の道に邁進していきたいと思っております.そして皆様におかれましては,今後も御指導御鞭撻を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます.
ありがとうございました.
大東 健太郎(農業環境技術研究所)
このたび統計関連学会連合大会コンペティション講演において優秀報告賞をいただきましたこと,大変光栄に思います.まず,コンペティ ション講演を企画・運営してくださった先生方,そして審査に参加していただきました皆様に厚く御礼申し上げます.また今回の研究に際し,播種から開花調査まで,多大なご協力をいただきました,農業環境技術研究所の研究支援室の皆様に深く感謝いたします.
本大会では,ダイズとツルマメをモデルとした開花期のズレを利用した時間的隔離のための指標についての報告をさせていただきました.二つの分布の類似度というのは古くから考えられてきたテーマでありますが,開花期の重複程度を表す指標としては用いられてきませんでした.今回モデルとしました,ダイズとツルマメは非常に交雑率が低いため,開花期の重複程度と交雑率の関係をしっかりと検証するには不十分なデータでした.今後はイネやトウモロコシなどを用いて,研究を続けていきたいと考えております.
今回,統計関連学会連合大会へは初めて参加したのですが,自分の研究分野において非常に役に立つ手法を数多く知ることができ,本当に有意義なものとなりました.もともとは新型インフルエンザで中止になりました計量生物学会での発表を予定していた内容でした.中止になりました計量生物学会,応用統計学会の事務局の皆様には本当に大変なご苦労があったと思いますが,私個人と致しましては,このような賞をいただくことができ,人生塞翁が馬と申しますが,幸運なことだったと感じております.最後に内輪ごとになりますが,日頃よりさまざまな話題について相談に応じてくださる三輪領域長をはじめ,魅力的な現実の問題を提供してくださる共同研究者の皆さまに深く感謝しております.これからもどうぞよろしくお願いいたします.
熊坂 夏彦(理化学研究所ゲノム医科学研究センター)
20世紀の初頭にメンデルの法則が再発見されてから50年後の1953年,ワトソン・クリックによってDNAの二重螺旋構造が明らかになりました.それから50年後の2003年にはヒトゲノムの全参照配列が解読され,われわれのDNAは約30億塩基対からなることが報告されました.
これからの50年は,今まで誰も経験したことがないような膨大で複雑なデータとの戦いになるでしょう.ここ数年で,すでに数十万から百万におよぶ一塩基多型(SNP)が安価にしかも高速に取得されるようになりました.また次世代シークエンサの登場により,今後5,6年もすれば,ヒトゲノムの全配列が個人単位でわずか1,000ドルで決定できるようになると予想されています.かつて学問の袂を分かった医学,情報学,数学,生物学,統計学,物理学といった現在の諸科学分野が,今後ヒトゲノム・データを中心にまた一つの科学として融合していくことでしょう.その時,数理(統計)モデルが,データとその背後に存在する生物・遺伝現象を結ぶ一つのインタフェイスとして,中心的な役割を果たすことは言うまでもありません.
今後ますます統計学の需要が増していくなか,このたび統計関連学会連合大会という大変権威ある学会におきまして,優秀報告賞を授かり大変喜ばしく思っております.これを励みに,既に始まっている次の50年に向けて,これからも日々研鑽を積んでいく所存です.あらためまして大会関係者の皆様に深く御礼申し上げますとともに, 今後とも一層のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます.
首藤 信通(東京理科大学大学院理学研究科)
この度の統計関連学会連合大会において, 身に余る光栄な賞を頂きましたこと, 誠に感謝申し上げます. 特に企画, 運営された先生方, 学生である私の発表に耳を傾けて下さった先生方, 日頃より私に多くの研究機会と懇切丁寧なご指導を下さっている瀬尾隆先生, 私の研究生活を陰で支えて下さっているすべての方々に深く感謝申し上げます. 特に兵頭昌さん(東京理科大学大学院・理学研究科)とは本報告に関わるたくさんの議論をさせて頂きました. また, 本報告は, 昨年度の連合大会で藤越康祝先生からご助言頂いた研究課題の1つでした. 1年後の本連合大会において, この結果によって優秀報告賞を頂けたことを大変うれしく思うとともに, 藤越康祝先生に厚く御礼申し上げます.
本報告では, 先行研究で与えられている線形判別法における誤判別確率に対する漸近近似の1つに対し, 標本ベクトルに欠測値を含む場合への拡張を行いました. 判別分析において誤判別確率に関する議論は大変重要な議論であり, この重要かつ未知である確率に対する従来の漸近近似の多くは完全データの下で構成された漸近近似でした. 発表に関しては, 私は普段から弁が立つ方ではないので, 上手にお伝えしようとするのではなく, 研究課題が多岐にわたる先生方に対して, 本報告の動機と設定について丁寧かつ確実にお伝えすることを心掛けました.
本報告は最尤推定量を用いた線形判別法における1つの結果でありましたが, 本来データの状況に応じて, より正確な判別がなされる推定法や判別法を使い分けることが理想的であり, これらに応じた本報告と同様の結果が必要であると考えております. 何分器用ではないもので時間はかかるかもしれませんが, 葛藤や失敗を繰り返しながらも, この研究課題も含めて残されるさまざまな問題に対し真摯に取り組むことで, 微力ながら統計科学の発展に寄与できれば幸いです. 今後はこの度の受賞に驕らず, これまで以上に努力をいとわず邁進する所存ですので, 今後とも何卒宜しくお願いいたします.
藤井 陽介(統計数理研究所)
この度は統計関連学会連合大会において優秀報告賞をいただきまして,驚きとともに大変光栄に思っております.日ごろから私の研究に対する助言をいただいております統計数理研究所の藤田利治先生,同逸見昌之先生,そして私の研究に対してコメントをくださった多くの方々に深く感謝致します.また,本コンペティションの企画・運営に携われた方々,ならびに座長の先生方,そして審査してくださった方々に感謝致します.
発表の演題は,「単剤・併用を伴う臨床試験の重み付け傾向スコア法による交互作用の評価」でありました.薬剤の有効性・安全性評価は通常,単剤試験・併用試験それぞれ単独で行われますが,単剤・併用の評価結果の相違,つまり単剤・併用と被験薬・対照薬の交互作用も実際的な関心事となります.しかし,このようなケースで交互作用を評価するときの問題点は,試験へ登録された後の薬剤の割付はランダム化されていますが,単剤・併用各試験への患者の登録はランダム化されておらず試験登録の選択性が懸念されることです.本研究ではこの選択性を調整するための傾向スコアによる重み付け推定量を提案致しました.
現在の研究の対象は上述のように臨床試験でありますが,この方法論はさまざまな分野へ応用ができるものだと考えております.一方で,本研究には解決しなければならない課題が数多くあります.今回の受賞を今後の私の研究活動の糧にし,一歩ずつ研究を進めてまいります.