企画セッションは次の7テーマが行われます.テーマ名とオーガナイザおよびセッションのねらいは次の通りです.企画セッションの運営はオーガナイザに一任していますので,企画セッションでの講演を希望される方は直接オーガナイザに相談してください.
Bayes統計は目覚しい勢いで進展している.特に,数値積分法の画期的な進歩は,事後密度の計算に係わる縛りを解き放ち,その適用が飛躍的拡大した.これまでは,論理的には一貫性があり望ましい方法であるが,実際的な制約が大きいと理解されてきた.一方で,実際の適用分野では,平滑化法のように,高次元母数の推定技法として利用されることが多い.数値計算の制約が小さくなった今日にこそ,改めてBayes統計が科学的推論の分野で妥当な枠組を提供するのか,が問われる.
このセッションでは,異なる視点からBayes統計の研究をしている研究者からの話題提供を基に,科学的推論という最も基本的な視点からBayes統計の将来を論じる場としたい.
抗がん剤の開発において先行する欧米では,臨床試験が盛んに行われ,効率的にエビデンスを収集可能な体制を敷いている.一方我が国では,厚生労働省「抗がん剤併用療法に関する検討会」,「未承認薬使用問題検討会議」等の動向にも見られるように,臨床試験の体制整備・実施の両面において遅れがちである.
この様な状況を踏まえ,生物統計学を専門とする試験統計家が効率的かつ適切な試験の計画・実施へより積極的に貢献することが強く望まれている.
そこで,本セッションでは「がん臨床試験における統計学の新展開と応用」をテーマとし,複数の専門研究者による新たな研究成果及び展望を発表する機会を持ち,これによりこの領域に関して統一的に議論することを目的とする.
生命保険や損害保険は古くからビジネスを行う上で統計学が重要な役割を演じている分野であることが知られている.
近年では国際的な動向のなかで保険業・証券業・銀行業などの間に存在している垣根が低くなりつつあり,保険を含むより広い意味での金融ファイナンス分野において金融リスクに関する統計学研究への需要が高まっている.
とりわけ,保険やファイナンスにおける金融リスク管理に関する研究は実務的な要請もあり,この間かなり盛んになりつつあり,確率論,確率過程論,統計的時系列解析,極値統計学,ベイズ統計学,ノンパラメトリック統計学などからの具体的な貢献も期待される.
本企画では日本における保険リスク管理の実務的担い手である保険数理人(アクチュアリー)との関係をも重視しつつ,こうした新しい保険・ファイナンス分野における動向に注目し,今後を展望することを試みる.
話題例としては例えば「変額年金保険」,「第3分野の保険問題」,「リスク尺度」,「地震保険・天候デリバティブ」,「住宅ローンの償還問題」,「公約規制」等を挙げておくが,むろんこれらの項目は単なる例示にすぎないことをお断りしておく.
わが国の政府統計は大きな転換点を迎えています。社会の現状を捉える上で不可欠な統計データに要求される信頼性の維持・向上を図りながら社会の変化に的確に対応しうる統計制度は,どのように構築されるべきか.本企画セッションは,現行の政府統計制度に潜む諸問題を洗い直し,問題解決につながる制度設計を具体的に論議することを目的としています.2つの基調報告と,それにもとづく討論とでセッションを構成する予定です.積極的な議論の場が提供できるよう努力いたします.
DNAアレイデータ(マイクロ,マクロなどを含む)やProteinアレイデータの解析現場では,統計的手法が各解析プロセスにおいて必須である.こられのアレイデータの特徴として,1)ケース数と特徴量の次元が著しく非対称なこと 2)計測量が,興味ある対象の変化を高度に捨象した量であること,3)計測ノイズを含めた諸々のノイズの影響が大きいこと等があげられ,そのため統計科学や機械学習の諸先端的な手法が必要とされる.提案するセッションでは,これまで2年間引き続いて行ってきた企画セッション“DNAアレイデータ解析に関する統計的諸問題”を発展させるなかで,新たな諸問題にどのようにとりくんでいくべきかを議論し,多くの統計科学研究者の英知を集め,次世代のバイオ情報科学の一つの柱となるきっかけをつくる.
統計科学は理工・文化・経済・生物等の全分野において有用な数理技術として用いられていながら,各固有分野においてはどちらかというと補助的な役割を果たしていること,また他の数理的アプローチに対する明確な有用性をアピールしきれていないことから,必ずしも正当な評価を受けていないという印象を受ける.本年2月に統計関連6学会が連合組織を設立し,連携して統計科学の推進・発展を目指すこととなったが,これを機に連合として何をすべきか,また何が出来るかについて前向きの討論を行いたい.種々の立場のパネラー数名に講演を頂いた後,フロアも含めて質疑応答を展開することを予定している.これにより,将来の方向付けを得ることを目的としている.
形態を定量的に解析する研究領域である形態測定学(morphometrics)は,過去20年の間に理論的・方法論的に長足の発展を遂げ,それと平行してコンピュータによる画像解析と計算能力が格段に進歩したことによりさまざまな事例(生物学,医学,考古学,製品科学など)に対して実際に適用できる分析ツールとしての地位を確立しつつある.とりわけ,幾何学的形態測定学(geometric morphometrics)と呼ばれる理論体系は,形態データのもつ幾何学的情報を抽出し,その変異パターンを統計学的に解析する一連の手続きを提唱している.形態学と数学そして統計学の交わる領域で開花しつつあるこの新しい学問をめぐる現在の進展と今後進むべき方向性について論議する場を持ちたい.
特別講演として次の2件が行われます.
日本統計学会第27代会長(2005年〜2006年)に一橋大学大学院経済学研究科の山本拓教授が就任されました.山本会長は経済データの時系列解析の分野で大きな業績をあげてこられました.著書『経済の時系列分析』は日経経済図書文化賞を受賞され,当該分野の権威ある教科書として広く読まれております.今回の会長就任講演では,ご自身の研究成果を含めて経済時系列解析の展望をお願いしております.
日本計量生物学会は,研究者へ刺激を与え,若い研究者の成長を促進し,また研究環境の開拓と研究の発展・拡大を期待して学会賞,功労賞,奨励賞の3賞を2003年に創設し,2004年に第1回の受賞者が選ばれている.今年の受賞者は5月21日の計量生物学会総会で発表ならびに表彰された.奨励賞は日本計量生物学会誌またはBiometrics誌,またはJournal of Agricultural, Biological, and Environmental Statistics誌に掲載された論文の著者で40歳未満の本学会員または学生会員から選出される.本企画セッションでは,2005年の奨励賞受賞者に,受賞対象となった論文を中心に研究の紹介をしていただくこととした.本講演を通して,研究者においては更なる研究の発展を奨励するとともに,計量生物学会会員,及び計量生物学に関心を持っている方々の研究を刺激し,また,広く統計学の研究者あるいは利用者の方々に計量生物学への関心を高めていただきたいと願っている.