2006年度 統計関連学会連合大会
主催: 応用統計学会・日本計量生物学会・日本統計学会
協賛: 日本行動計量学会・日本計算機統計学会・日本分類学会
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受賞のことば


最優秀賞受賞者

川口修治 (九州大学大学院数理学府)


 はじめに,コンペティションの企画運営に携わった関係者の方々並びに私の講演の審査をしていただいた方々にこの場を借りて感謝の意を表したいと思います。この度,コンペティションにおいて栄誉ある最優秀報告賞を頂き大変うれしく,身に余る光栄です。また様々なコメント,協力,励ましを頂いた皆様には厚く御礼申し上げます。

 近年取得されるデータの高次元化に伴い,様々な判別・特徴抽出手法が提案されています。とりわけBoostingは,シンプルな弱判別機を結合することで,複雑な判別問題に適用できる利点から,現在多くの分野において盛んに用いられています。AdaBoostは弱学習機を適切に選択することで,より高精度な判別結果が得られます。本研究では変数の線形結合やカーネルで作られる2群判別機(スタンプ)をランダムに生成し(ランダムスタンプ),弱判別機とすることで柔軟な判別機を生成することを可能としました。次にランダムスタンプによるAdaBoostの精度向上・安定化を図るため,教師データのランダムな分割及びテストリスクを用いたAdaBoostを提案しました。提案した手法は,シミュレーションデータのみならず,高次元の人工衛星観測画像の判別・特徴選択に対して有効な結果を示しました。特に,この結果がリモートセンシング関係の国際ジャーナル誌の結果を上回れたことが大きな成果です。今後は,本手法を他分野に適用することを目的としております。

 修士課程では(現在においても),主にリモートセンシング分野を研究発表の場としておりましたので,このような統計関連の大会での発表は今回が初めてでした。そのため,いままでの発表スタイルがこの場においても活かせるのかと萎縮していました。しかし,分野が違っても発表における基本的なポイントは同じであることを真に感じました。スライドは手法を明瞭に説明し,結果を重点に説明することに尽力しました。

 今後もこの賞を励みに,統計的方法論による手法が様々な応用分野における目覚ましい成果に結びつくよう,愚公移山の精神で日々研究に取り組む所存です。最後に改めまして,素晴らしい賞を頂き,本当にありがとうございました。


優秀賞受賞者

堂園剛司 (九州大学大学院数理学府)


 統計関連学会連合大会コンペティションセッションにおいて優秀報告賞を受賞させていただき,大変光栄にそして嬉しく思っております。まずコンペティションセッションの企画・運営に携われ発表の機会を与えてくださった先生方,座長の先生方,そして審査にご協力いただき貴重なコメント・質問をくださいました皆様に厚く御礼申し上げます。また日頃より丁寧にご指導いただく小西貞則先生,統計学を学ぶ契機を作ってくださった稲田浩一先生,共に学び支えていただく研究室の仲間,そして関係者の方々に心より感謝申し上げます。

 今回の発表では,離散時点観測データをガウス型動径基底関数展開法によって関数化し,Schmidtの直交化法により得られた正規直交基底の推定係数ベクトル集合に対し自己組織化マップを適用してクラスタリングを行う方法を提案いたしました。各対象に対して経時的に観測された離散的なデータを滑らかな連続関数として捉え,その関数からなるデータ集合に対して分析を行う手法は関数データ解析と呼ばれています。基底展開法に基づく関数データのクラスタリングについては,従来,係数ベクトル集合に直接k-means法などのクラスタリング手法を適用した研究が行われてきました。しかしながら,この手法では関数データ空間上の距離が保存されない,また関数データの導関数の情報を取り入れた解析が行えないなどの問題点がありました。提案手法では基底関数を正規直交化することによりこれらの問題点を克服し,スペクトル分光データの解析を通してその有効性を検証いたしました。

 今回の研究内容はいたってシンプルでありますが,一連の発表の流れとスライド一枚一枚のつながりを構成するのは困難を要しました。コンペティションに臨むにあたり,最も重視したのは聴いてくださる方々にとってわかりやすいプレゼンテーションをすることです。これは日頃のゼミにおいて,数式ひとつをとってもその式を言葉でわかりやすく表現するようにと指導を受け,傾聴者の立場にたった発表の重要性を学んでいるからです。したがってこの度の受賞という結果により,私を育ててくださる研究室の成果としてわずかながらですが寄与できたことによろこびを感じています。

 私はまだまだ未熟でありますが,この経験を糧に将来何らかの形で社会に貢献できるような,またこの賞に恥じぬ人材を目指して精進していきたいと思います。これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。


優秀賞受賞者

西浦博 (長崎大学熱帯医学研究所)


 このたびは,統計関連学会連合大会優秀報告賞をいただきまして,ありがとうございました。自分が最も面白いと感じる応用的研究を統計学専門の先生方に評価していただけたことは大変嬉しいですし,私にとって非常に大きな自信に繋がりました。感染症数理の恩師である広島大学の梯正之先生,英国の理論疫学指導者Roy Anderson先生,ドイツの数理疫学指導者Klaus Dietz先生と共同研究者Martin Eichner先生をはじめ,日頃よりご指導いただきお世話になっている全ての方々にこの機会を借りて深謝致します。

 本報告では,天然痘の歴史統計を利用してワクチン免疫の持続期間推定を行いました。これまでに収集した約9千編の天然痘流行記録の中から,ワクチン再接種や暴露後ワクチン接種が実施されていない下での流行データであることを絶対的な選定条件として,1900年前後の英国における年齢階級別・ワクチン接種歴別の感染者数を選択・利用しました。ワクチン接種歴別で見た感染者の年齢分布に見られる特異的免疫喪失パターンを定量化するために,2変量ポアソン計数データモデルを用いることによって免疫消失関数を与えるパラメータの最尤推定値を得ました。免疫持続期間の中央値は11.7−28.4年の範囲で推定され,天然痘根絶前に予防接種を受けた者は既に免疫を失った可能性が高いと考えられました。しかし,重症天然痘を回避する部分効果を別途で推定したところ,ワクチン接種後50年以上が経過しても50%以上の接種者は未だに部分免疫を保持している可能性が高いと期待されました。

 私は医学部を卒業したために,医学教育の中で短期的に教わる基礎的内容を除けば詳しい統計教育を経験したことがありません。そのため,統計学領域の学会や研究集会で発表する機会を与えていただいた際は,自分の推定モデルにおける技術的欠陥や妥当性に問題がある可能性について常に不安を感じています。しかし,感染症疫学データは様々な点で特異性が高いために余りにも面白く,同分野に応用的手法を提案する作業は私の研究における必須条件であると考えています。そのため,敢えて批判を浴びる目的で統計学領域の学会に演題を提出することを自身の勉強の機会にさせていただいています。特に,数理統計学の専門的研究が多い同大会で勉強できる機会は私にとって大変貴重な経験でした。自身が応用することの多い手法と余り関連が深くない内容は未だフォローすることさえ難しいのですが,何を学べば良いかを明らかにできましたし,何よりも非常に刺激的で有意義な時間を過ごすことができました。私は日本計量生物学会の会員ですので,同学会はもちろん連合大会を含めて今後も統計学領域の学会に参加させていただく予定です。応用的研究の内容を深く幅広くすることを心掛け,将来には学会発展にも貢献できる研究ができるよう努力して参ります。ぜひ,今後ともご指導いただけますよう宜しくお願い申し上げます。


優秀賞受賞者

西山貴弘 (東京理科大学大学院理学研究科)


 この度の統計関連学会連合大会コンペティションにおいて,優秀報告賞を頂き大変光栄に思っています。日頃からご指導頂いております瀬尾隆先生をはじめ,お世話になっているすべての方々に,この場を借りて心から感謝申し上げます。

 今回の発表では,正規母集団の下で平均ベクトル間の多重対比較法を行う手法である,多変量Tukey-Kramer法について議論し,その重要な性質である多変量一般化Tukey予想を母集団数が4つの場合について証明しました。さらに,この場合の保守性の上限を与え,数値実験により保守性の程度を評価しました。多変量一般化Tukey予想は,「多変量Tukey-Kramer法は常に保守的な同時信頼区間を構成する」という予想ですが,今まで母集団数が3つの場合でしか証明されていませんでした。今回,母集団数が4つの場合について証明できたことは非常に意義があることだと思われます。また,保守性の程度を把握することは,多変量Tukey-Kramer法を実際に用いる際に役立つ情報として参考になるでしょう。

 今回のコンペティション講演を通じて非常に貴重な経験が得られました。コンペティション講演として相応しい発表をすると同時に,聴衆の方々に理解し易い発表をするために,スライドの作成や表現方法の工夫に自分なりの努力をしてきました。このような様々な努力を優秀報告賞として評価して頂き大変うれしく思っています。

 最後になりますが,このような貴重なコンペティション講演を企画・運営していただいた関係者の方々,貴重なコメント・質問をして下さいました方々,審査に参加いただいた方々に改めて心から感謝申し上げます。今後もこの受賞を励みとして,一層の努力を重ね,統計学の発展に少しでも貢献できればと考えていますので,今後もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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