2006年度 統計関連学会連合大会
主催: 応用統計学会・日本計量生物学会・日本統計学会
協賛: 日本行動計量学会・日本計算機統計学会・日本分類学会
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チュートリアルセミナー報告


テーマ: 「独立成分分析」

下平英寿 (東京工業大学)


 講師の村田昇氏は本テーマの第一線で活躍される研究者である。MEG信号等の実データ解析からはじまり,主成分分析,因子分析,射影追跡等との関連,独立性の評価基準,実装にかかわる最適化手法まで存分に語っていただいた。講師,座長の金森敬文氏,会場の聴衆で活発な議論が行われた。いうまでもなく多変量解析の一種であるが,非正規性を積極的に生かす新鮮さがある。これまで信号処理,学習理論のコミュニティーで強力に研究が推進されて,最近は統計学分野でも関連研究が増えてきた。統計学自身からこのような流れを創出できなかった点はよく考えたほうがよいかもしれない。いずれにしても,このテーマがコミュニティー間のさらなる交流のきっかけになることを期待する。(スライドが次のURLから入手可能 http://www.eb.waseda.ac.jp/murata/noboru.murata/lecture/ica/slide.pdf


テーマ: 「adaptive and flexible designs in clinical trials」

上坂浩之 (日本イーライリリー)


 本チュートリアルセッションが扱った内容は,現在,医薬品の臨床試験に関する研究の中で最も盛んに議論されている話題である。医薬品の開発にかかる時間,資源および費用は増加の一途をたどっており,開発を促進させるためにも,より合理的な試験方法の開発が望まれている。この状況を反映して欧米では,adaptive and flexible designについて,産官学での研究会が盛んに催されている。日本では,残念ながらこの領域の研究は格段に遅れている。セミナーでは,アメリカのVanderbilt大学でこのテーマで研究されている小山達樹博士にadaptive and flexible designの理論についての講義をしていただいた。Adaptive and flexible designでは,試験の中間結果を利用して,その後に組み入れられる被験者のデータの解析における仮説の変更,一部の試験治療群の除外,解析する変数の変更,被験者数の変更などを計画する。ここで問題になることは,試験の中間結果に基づくこれらの変更によっても,第1種の過誤確率の増大をきたすことなく,できるだけ少ない被験者数で検出力あるいは精度を確保する方式を見出すことと,それに伴う推測理論の確立である。また試験の実施ならびに評価に関しては,中間解析以後のデザインの変更によりもたらされる可能性のあるバイアスを抑制することである。このチュートリアルセッションでは,2薬剤の比較試験について,統計的推測とデザインの設計に関する理論を解説していただいた。講義では,基本的な考え方から最新の理論と,試験デザインの決定の方法を,例題を用いてわかりやすく解説していただいた。

 実施上の問題については,翌々日に行われた企画セッション「臨床試験におけるadaptive designの活用」にて議論された。このチュートリアルセミナーは企画セッションの参加者にとっても,designの理論的側面の理解に役立ったこととであろう。このセミナーならびに企画セッションを契機として,多くの方々にadaptive and flexible designに関心を持っていただき,この分野の研究の発展とデザインの活用が促進されることを願っています。

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