2006年度 統計関連学会連合大会
主催: 応用統計学会・日本計量生物学会・日本統計学会
協賛: 日本行動計量学会・日本計算機統計学会・日本分類学会
トップページ > 総括 > 企画委員会報告

企画委員会報告


企画委員会委員長 矢島美寛 (東京大学)


 報告集が完売するという嬉しい誤算も生じるほどの盛会裡に(ご迷惑をおかけした方々にはお詫び申し上げます),大会を無事終了することができました。ちなみに大会参加者約850名,うち学生約180名と過去最高の参加人数でした。これもひとえに講演者・参加者の皆さん,実行委員会,会場をお貸しくださった東北大学,後援,助成を賜った官公庁・諸団体・諸機関のご協力のお陰です。衷心より御礼申し上げます。
 以下では今後さらに連合大会を充実させていくために,今年度企画委員会の業務を回顧すると同時に今後の検討課題をいくつか述べます。これらについて会員の皆さんから忌憚のないご意見をいただければ幸いです。なお個別の企画につきましては,担当責任者の報告をご一読願います。

(1) 連合大会の意義について:
 連合大会は統計科学に携わる各学会員が一堂に会して日頃の研究成果を発表する場であるとともに,各学会独自の年次大会あるいは年会でもあります。前者の視点から考えますと,人文・社会科学から自然科学に至る汎用的なデータ解析法の開発・発展に向けて,日頃は専門分野も異なり出会うことの少ない個々別々の学会に所属する会員同士が互いに啓発し,シナジー効果を醸成できる場にすべきだと思います。一方後者の視点からは,各学会に所属する会員がその学会の独自性・カルチャーに基づいた研究内容を発表する場でもあります。2つの目的の同時達成を期す場合,時には齟齬を生むこともありますが,決して矛盾したり,トレード・オフの関係にあるわけではないと思います。どちらも重要な2つの目的を調和・融合して統計科学の発展に寄与していくことが,連合大会の使命だと考えます。

(2) 企画セッションのあり方について:
 今回は従来の方式を踏襲し会員からの公募制を採用しました。各オーガナイザは非常に熱心に企画を立ててくださり,また個々の企画は大変優れており,私もいくつか巡回して拝見しましたが,聴衆の皆さんが熱心に聞き入っているのが印象的でした。
 しかし一方で昨年よりセッション数が5件も増加しました。公平性を期し一律2時間の時間枠を全セッションに配当した結果,今回はパラレル・セッションの個数が前回よりひとつ増え7つになりました。また企画セッションは初日・二日目に配置したため,最終日の一般講演はやや「虫食い状態」のプログラム編成となりました。
 (1)で述べたことにも関連しますが,企画セッションは学会横断的な企画と各学会の独自性を発揮する企画とが,さらには一般講演とも程良くバランスしていることが必要に思います。その点から考えますと,企画委員会には委員として各学会の代表も入っているわけですから,文字どおり企画委員会がイニシアチブをとって大所・高所の見地から企画セッションの内容や個数についてガイドラインを設定するのも一方法ではと考えます。

(3) コンペティション・セッションについて:
 コンペティション・セッションは今回で4回目となります。今回は従来の方式とは異なり,応募者から提出いただいた講演資料に基づき企画委員会で事前審査を行い,上位8名の方に大会での講演を依頼しました。
 この方式は私が委員長として提案し,企画委員会で承認いただいた方式です。その趣旨については大会ホームページに掲載してありますので,未読の方はご一読願います。
 私自身は集中してじっくり各講演者の講演を拝聴できましたが,この方式が最良だと主張する気は毛頭ありません。今回の方式を含めて実施方式は出尽くした感があります。これらを参考の上,今後は方式をfixする方向で次期委員会でご検討いただければ幸いです。審査結果につきましては,担当企画委員の報告をお読み願います。

(4) チュートリアルについて:
 二つのテーマは,現在のホット・トピックであり,多数の方が参加されました。講演者の方々に厚く御礼申し上げます。詳細については担当企画委員からの報告をお読み願います。

(5) 市民講演会について:
 現在の日本社会が抱える重要問題のひとつであり,多数の方が参加されました。特に自分達の将来の切実な問題として意識している若い学生が,数多く参加しているのが印象的でした。講演者の方々に厚く御礼申し上げます。詳細については担当企画委員からの報告をお読み願います。

(6) 大会用Web・HP,申し込みシステム,報告集用原稿提出システムおよびプログラム・報告集の作成・校正など:
 以上の項目を担当された委員の方には,私がテクノ音痴のため多大なご負担をかけ忸怩たる思いがあります。Web利用により便利になった反面,一方で色々なトラブルが発生いたしました。子細については省略しますが,原因の一つは,委員会内における前年度からの引継,委託業者内における前年度担当者と今年度担当者の引継,そして委員会と業者の間の連絡がそれぞれ不徹底であったことにあると思います。この反省を踏まえ,我々としては,次年度の委員会の作業が円滑に進むよう文書化して,一年間の作業の流れ,懸案事項を申し送りたいと考えています。
 また今回は昨年度よりさらに報告集の軽量化を図り,全講演一律1頁としました。コンパクトでハンディになったことを会員の皆さんも実感されたと思います。なお報告集に関連して,申し込み時と報告集用原稿で著者の数,順序,タイトルが異なる講演あるいはフォーマットが指定の様式と異なる原稿が散見します。校正を速やかに進められるよう会員の皆様のご協力をお願い申し上げます。

(7) 大会・チュートリアル・懇親会への事前参加申し込み:
 本年度も事前参加申し込みを採用いたしました。多くの方に事前申し込みをしていただきますと大会当日の事務局の仕事,なかでも一番センシティブな会計係の仕事がかなり軽減されます。来年以降もご協力お願い申し上げます。

(8) 大会の大型化・事務の簡素化・諸会費について:
 三題噺めきますが,この三項目は深く関連しています。冒頭に述べましたように参加者・講演者が多くなるのは大変好ましいことです。しかしながらそれによって事務の量も年々増加していきます。私事で恐縮ですが,私はいくつかの学会に所属しておりますが,統計関連学会は会費に比べ,サービスが行き届いた学会に思います。その家族的な暖かさが居心地を良くしてくれます。
 しかしそれを可能にしているのは,大会を準備される方々の目に見えないshadow workに支えられているからです。私自身自分の不明を恥じますが,昨年までのように一会員として参加しているだけでは見えなかった,これらの方々の無償の営為によっ大会が成立していることを,今回企画委員会委員長を仰せつかって初めて理解いたしました。
 したがって限られたヒト,モノ,カネ,時間のリソースを有効利用するため,プライオリティの低いサービスはカットすべきだと思います。会員の方におかれましては,大会参加費が妥当な金額か御疑問に思われる向きもあるかもしれませんが,会計報告に現れる支出のみがコストではありません。目に見えない大会運営に携わる方々の機会費用を,人件費に換算するれば膨大な金額になると思います。また国立大学といえども独立行政法人に移行後は独立採算制となり,かってのように公共施設を使えば安く済むという時代は終わりました。会場の借料も支出の大きな割合を占めます。このような事情が諸会費に反映されていることを,お酌み取りいただければ幸いです。

(9) 結び:
 最後にそして最小ではなく,このような職に不慣れな私を全面的にサポートしてくださった企画委員会委員,実行委員会委員,事務局スタッフ,会場アルバイトの学生の方々に感謝いたします。
 多くの方々は私より若い世代に属します。かねがね皆さんの学問的能力は高く評価していましたが,それだけではなくマネージメント能力にも卓越している方々ばかりで吃驚致しました。また閉会式後,三々五々帰途につかれる会員の中にも,数多くの若手会員が目につきました。
 前述のコンペティション・セッション趣意説明にも書きましたが,学問が不断の発展を遂げるためには,優れた後継者の育成が必要不可欠です。現在統計科学は他分野からそのレゾン・デートルを厳しく問われていると思います。しかしこれらの若手の方々を拝見して,統計科学の将来に大きな希望を持ちました。

Copyright©2006 Toukei Kanren Gakkai Rengo Taikai. All Rights Reserved.