コンペティション受賞者のことば

[1]概況・総括

 大会は,予定通り,2008年9月7日(日)から10日(水)まで慶應義塾大学理工学部矢上キャンパスにおいて開催されました.7日に市民講演会およびチュートリアルセッション,8日から10日まで企画セッション・コンペティションセッションを含む学術講演およびソフトウェアセッションが行われました.

大会期間中,幸いにして晴天に恵まれましたが,7日の夕方には強い雷雨があり,一時停電し,帰宅・帰ホテルの足が奪われました.また,9日朝には東横線の遅延により,セッションの開始を20分遅らせるというハプニングがありましたが,全体としては市民講演会約210名,チュートリアルセッション約200名(会場内),招待講演者を含めて約820名の大会参加者数を得て,概ね順調に大会を終了することができました.大会の成功は,偏に講演者・オーガナイザー・座長および参加者諸氏のご協力の賜物と感謝する次第です.

さて,以下に,Webによる講演その他の申し込み受付,市民講演会,チュートリアルセッション,コンペティションセッション,統計分析・データ・教育ソフトウェアセッションの各担当責任者により,それぞれの担当についての報告をしてもらいましたので,ご覧下さい.本報告が今後の大会企画に少しでも参考になれば幸いです.連合大会の益々の発展を願っております.

(プログラム委員会委員長 清水邦夫 慶應義塾大学理工学部)

          

[2]Webによる講演その他の申し込み受付

大会では,企画セッション53件,コンペティション21件,一般159件の合計233件の学術講演(+企画セッション日本統計学会各賞受賞者講演)が行われました.申し込みにつきましては,一般講演や参加の事前申込み,報告集原稿提出は基本的にホームページ上で行いましたが,締め切り直前にWebシステムが不安定になるなど申し込みされた会員の皆様にはご迷惑をおかけしました.また,今回,講演申込時のキーワードについて,該当するキーワードがない場合には「その他」の欄を作成し,申込者に記入していただく形式をとりましたが,この点はプログラムの編成に参考になったと思われます.

(担当責任者 瀬尾隆 東京理科大学理学部)

[3]市民講演会

統計関連学会における研究・教育活動内容の普及啓発を目的として,例年通り青少年や一般社会人を対象とした市民講演会が,9月7日(日)12:30〜17:30にかけて,慶應義塾大学矢上キャンパスマルチメディアルームにおいて開催された.とくに今回は,「情報社会と統計教育〜私たちの暮らしを支える身近な統計」をテーマに,3件の講演会および6件の展示・体験ブースが設置され,市民,高校生,教育委員会,教師など学校関係者および統計関連学会会員など約210名の参加者が熱心に講演に聞き入り,また各講演の前後には,展示された教材を見て回るなど盛会であった.

講演会は,司会進行:清水邦夫(慶應義塾大学)により,以下のセッションで構成された.


第1セッション 座長 田栗正章(大学入試センター副所長)

 「私たちの暮らしと統計−統計は国民の共有財産−」

   川崎 茂(総務省統計局長)

第2セッション 座長 澤田利夫(東京理科大学数学教育研究所長)

 「指学習指導要領で重視された統計活用能力−算数・数学科での今回の改訂の考え方−」長尾 篤志(文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官)

第3セッション 座長 清水邦夫(慶應義塾大学)

「統計家が考えるリテラシー『豊かに生きるための智』プロジェクトの議論より−」

吉村 功 (東京理科大学教授) 

閉会挨拶 北川源四郎(統計数理研究所長)


 また,講演会場に併設された以下の6件の展示・体験ブースでは,それぞれ特徴的な統計教育教材・資料が展示・配布された.


 今回の市民講演会は,平成20年度文部科学省科学研究費(研究成果公開促進費)補助事業に採択され,主催:日本統計学会 ,共催:統計関連学会連合・数学教育学会・統計数理研究所・全国統計教育研究協議会・(財)日本統計協会・(財)全国統計協会連合会・(財)統計情報研究開発センター・東京理科大学数学教育研究所 ,後援:総務省・日本数学教育学会・横浜市として開催された.この助成金と大会運営費により,HPの開設に加え,カラーチラシ,ポスター,パンフレットなどが制作でき,共催いただいた諸団体を通じて全国の教育関係者に市民講演会の広報を介して統計教育の今日的意義を伝えることができた.

(担当責任者 渡辺美智子 東洋大学経済学部)

[4]チュートリアルセッション

 今年度のチュートリアルセミナーの開催に当たって,昨年度と同様に,学会員からテーマを募ることとなった.その結果,1件のテーマの提案があったが,講師担当の候補となった先生のご多忙と,私ども担当委員の力不足のため,提案されたテーマのセミナーは実現できなかった.そこで,担当委員が,注目すべき2つの分野「1. メタアナリシス」と「2. 構造方程式モデリング」を選定して,1のテーマは折笠が,2のテーマは足立がオーガナイザーとなり,それぞれ,手良向聡氏(京都大学),および,豊田秀樹氏(早稲田大学)に,具体的なテーマ名と内容の決定を含めて講師お願いしたところ,快諾を得てチュートリアルセミナーが実現した.なお,テーマ2については,豊田氏を含めて計4名でのリレー方式をとることとなった.決定したテーマ名と,文責の足立が要約した概要は次のとおりである.

[テーマ1] メタアナリシスの方法と実践

講師: 手良向 聡(京都大学)

医学分野におけるメタアナリシスの方法と実践に焦点をあて,主にランダム化対照臨床試験のメタアナリシスに関する標準的なデータ解析手法および留意点について事例を交えて解説がなされた.


[テーマ2] 構造方程式モデリング −3次までの積率構造の理論と応用−

講師: 豊田 秀樹・岩間 徳兼・竹下 恵・久保 沙織 (早稲田大学)

構造方程式モデリングの3次までの積率構造の理論とその適用法が論じられ,この方法によって,殆ど,どんな分布でも漸近的に有効な推定量が構成でき,識別性・同値モデルの問題を回避して適合度によるモデル間比較ができることが解説された.


 9月7日のセミナー当日の聴講者は,足立が数えたところ,最大時に197名に達して,会場の教室は満員に近くなる盛況ぶりであった.ご聴講いただいた皆様方に感謝申し上げたい.2008年夏の特徴ともいえる雷雨がセミナー途中より降り出して,終了間際には,近くでの落雷を感じるほどの空襲の如き激しい雷が停電を心配させたが,瞬間的停電が起きたのはセミナー終了後であり,難なきをえた.おかげで,セミナーでの最新の話題が,雷の迫力のごとく,充実したものであることが実感できた.

(担当 足立浩平 大阪大学,折笠秀樹 富山大学,宮田 敏 癌研究会ゲノムセンター)

[5]コンペティションセッション

 統計関連学会連合大会のコンペティション講演は今年で6回目であります.対象者は,平成20年4月1日時点で満30歳未満のいわゆる若手研究者(大学院生,教員,社会人等を問わない)です.大会における連名講演の場合は,コンペティション対象者は実際に口頭発表した方としました.

 コンペティション講演を申し込まれた方皆さんに大会当日に講演していただきました.審査方法は,昨年はセッション参加者による一般審査のみでしたが,今年は,当日の口頭発表に対しての数名の審査員による特別審査と参加者の一般審査との総合評価で行いました.

 大会における審査方法については,数名の審査員の記名投票とコンペティションセッションの参加者の記名投票に基づき,プログラム委員会で選考することにしました.特別審査および一般審査での評価は,共に,A,B,Cの3段階評価(A:受賞に値する,B:受賞としてもよい,C:受賞に値しない)を用いました.なお,講演者ならびに共著者は自身への投票は出来ないことにしました.

 評価は,研究内容のみならず,発表者各自が工夫をして,うまく内容を伝えられたか,質問に的確に答えられたかという発表の仕方も含め,全体としての素晴らしいプレゼンテーションになっているかを評価の対象としました.

 

 コンペティションセッションは9月8日(月)の午前,午後(1),午後(2),そして9月9日(火)の午前と同じ会場(B会場)で行われました.講演数は21件でした.特別審査と一般審査のそれぞれに対して,Aを2ポイント,Bを1ポイント,Cを0ポイントとし,講演者毎に有効投票数で平均点を算出し,総合評価をしました.選考は,これらの点数に基づき,プログラム委員会で行いました.最優秀報告賞は1名,優秀報告賞は3名を予定していたのですが,プログラム委員会で検討しまして,今年度に限って最優秀報告賞は1名,優秀報告賞は4名に授与することにしました. 2008年度統計関連学会連合大会の最優秀報告賞は,山本紘司さんに,優秀報告賞は,川野秀一さん,白石友一さん,松井秀俊さん,そして,三浦翔さんに決定いたしました(五十音順).大会中,懇親会場において懇親会の直前の表彰式にて受賞者を発表して表彰し,それぞれ賞状と副賞が贈呈されました.

 コンペティション講演をされました皆さんが,研究内容や発表の仕方等,素晴らしいプレゼンテーションでありました.昨年のコンペティション報告にも書きましたが,連合大会のような大変権威ある大きな学会でコンペティション講演することは,受賞する,しないにかかわらず,若手の皆さんにとって大変に有益であり,今後の研究活動への大きな励みになると思います.若手によるコンペティション講演は,毎年,大変多くの方が関心を持って注目しております.多くの方に自分(自分の研究と自分自身)を知ってもらう,又とない絶好のチャンスであります.

 権威あるジャーナルへ論文を掲載することは重要なことでありますが,それとともに,若手の皆さんにとって,多くの方から一躍注目される立派なコンペティション発表をすることも大変に重要なことであります.今回コンペティション講演をされました方の中から,将来世界のトップクラスの統計研究者が誕生するものと確信しております.これからも若手の皆さんには,是非コンペティション講演を考えていただきたいと思います.

 最後に,コンペティション講演を申し込まれました若手研究者の皆様,座長の先生方,審査に参加されました皆様,そして,コンペティション講演に関する準備等いろいろとご尽力いただきました大会運営関係者の方々へ心よりお礼申し上げます.

(担当責任者 富澤貞男 東京理科大学理工学部)

「受賞者のことば」は別欄に掲載されています.

[6]統計分析・データ・教育ソフトウェアセッション

 2008年度統計関連学会連合大会のセッションの一つとして,「統計分析・データ・教育ソフトウェアセッション」(座長:岡山大環境・飯塚誠也,実践女子大人間社会・竹内光悦,オーガナイザー:岡山大環境・飯塚誠也,実践女子大人間社会・竹内光悦,関西大経済・橋本紀子)が,2008年9月8日(月)13:30〜15:30に慶應大学矢上キャンパス12棟109番教室(C会場)において行われました.

 統計分析・データ・教育ソフトウェアに関係する多くの関連企業や研究機関のご協力があり,合計9件の講演となりました.プログラムは次の通りです.

 


 本セッションにおきましては,最新のデータや統計ソフトウェア,教育ソフトウェアに関する様々な内容の講演で非常に有意義なセッションとなりました.この場を借りまして,ご講演いただいた企業および研究者の方々に感謝申し上げます.

(担当責任者 飯塚誠也 岡山大学大学院環境学研究科)