チュートリアルセミナー報告
塚田良雄(アベンティスファーマ)
「データマネジメントのプロセスとシステム ―
臨床試験を例として ―」
臨床試験を例として、データマネジメントのプロセスとシステムの概略を臨床開発のグローバル化やデータマネジメントを取り巻く最新の動向を視野に入れて紹介することにより、参加者にデータマネジメント業務の実際とその重要性を改めて認識あるいは理解してもらう事を目的として、日本製薬工業協会(製薬協)の協賛の下に本チュートリアルセミナーを企画・開催した。
発表は、先ず、藤本氏(日本シエーリング)が、臨床試験データの特徴とともに、臨床試験データベースの構築においての必要条件と考慮すべき事項を標準化に関する世界的動向も踏まえて紹介した。次に、吉本氏(キリンビール)は、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)の要件を満たしたデータマネジメント業務と、症例報告書の作成からデータがクリーニングされ解析可能なデータとして解析担当者に渡されるまでのプロセスについて説明した。最後に永谷氏(日本イーライリリー)は、臨床試験データ収集に関する最近の話題の1つである、EDC(Electronic Data Capture)について、その概略と期待する効果や効果的運用のための課題をGCP等の要求事項も考慮に入れて紹介した。
3名の発表者はいずれも製薬企業において10年以上に亘りデータマネジメント業務に携わっており、それぞれの実務経験と最近の製薬協での活動成果を基にした具体的な発表内容であった。
研究の目的に合致した質の高いデータがあって初めてデータに基づいた正しい統計学的結論が下せる訳であり、今回のチュートリアルセミナーがこの事を再認識する場として位置付けられ、統計家のデータマネジメントに対する理解が一層深まれば幸いである。
また、今回の発表では、臨床開発のグローバル化への対応や業務の効率化を目指してデータマネジメント領域で進行している新しい試みや業界横断的な活動等の最前線の動きも幅広くカバーした。この点からも、参加した統計家のみならずデータマネジメント担当者にとっても有益な内容であったものと確信する。
参加者は予想を上回る二百数十名に及び、データマネジメントに対する関心の高さが窺えた。